1 商号を決める
会社設立の事前準備として会社の基本事項を決めていきます。会社の基本事項とは主に定款や登記申請書に記載する事項のことです。事前に会社の基本事項をきめておくなら、会社設立手続きをスムーズに進めることができます。会社設立にあたって事前に準備できる10項目について考えてみましょう。
まず、商号についてです。商号(会社名)は原則自由に決めることができますが、登記するためには守らなければならないルールがあります。使用できる文字・使用できない文字等、ルールを守らなければ商号として認められず登記することができません。以下、商号のルールについて説明します。
商号の中に必ず「株式会社」の文字を入れる
商号には必ず「株式会社」の文字を入れなければなりません。入れる場所は「商号の前」(前株)でも「商号の後」(後株)でもどちらでも構いません。
株式会社の代わりに英文表示の「Co.,Ltd」、「K.K.」などで登記することはできません。もし英文表示を用いたい場合は、登記することはできませんが定款に記載することは可能です。例えば「当会社は株式会社大崎運送と称し、英文ではOSAKI EXPRESS Co.,Ltdと称する」と定款に記載することができます。
なお株式会社以外の会社であっても同じく、「合同会社」「合資会社」「合名会社」などの会社の種類を商号の中に入れる必要があります。
商号に使える文字は限定されている
漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字(大文字・小文字)
アラビア数字(1,2,3・・・)
その他の符号
「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点)
ただし、商号の先頭または末尾に使用することはできない。「.」(ピリオド)についてはその直前にローマ字を用いた場合に、商号の末尾で使用可能。
スペース
ローマ字で複数の単語を表記する場合に限り、単語の間を空白(スペース)によって区切ることが可能。
法務省のホームページ
「商号にローマ字を用いることについて」
会社の支店または一部門を示す商号は使用できない
支店、営業所、総務部、人事部など会社の一部門を表す文字は使用できません。
有名企業と同じ会社名は使用できない
「三井」、「三菱」、「トヨタ」、「ソニー」、「ソフトバンク」など、社会的に認知されている有名企業の商号をそのまま使用することは、「商標権」侵害や「不正競争防止法」に反するため使用できません。
会社設立前に商号調査は必要?
同一の市町村内に事業目的が同じで商号が同じであることを「類似商号」といいます。以前はこの類似商号が禁止されていたため、会社を新たに設立する際、商号を調査することが必要でした。
しかし現在の会社法ではこの類似商号の規制が緩和されたため、住所が違えば同一市町村内で同じ事業目的で同じ商号(類似商号)でも登記することができるようになりました。
規制は緩和されたとはいえ、商号調査の必要が全くなくなったというわけでもありません。類似商号の場合、会社法8条や不正競争防止法に基づいて、商号の差し止め請求や損害賠償請求を起こされる可能性があるからです。
会社法8条 不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
不正競争防止法4条 故意または過失により不正競争を行なって他人の営業上の利益を侵害した者はこれによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。
そうした事態を避けるためにも、やはり事前に商号を調査して同じ商号の会社がすでに存在するなら避けるほうが賢明です。
法務局へ行って「商号調査簿」を確認する
商号調査は本店所在地を管轄する法務局で行うことができます。法務局に備え付けられた「閲覧申請書」に必要事項を記入し窓口に提出することによって、無料で商号調査簿を閲覧できます。法務局にはすでに登記された商号が五十音順に記載された帳簿が備え付けられています。同一市町村内に類似商号がないかチェックし、類似商号があった場合、事業目的も類似していないか確認しておきましょう。
法務省ホームページ
管轄法務局の一覧
「特許情報プラットフォーム」で商標登録を調べる
「特許情報プラットフォーム」(J-PlatPat)は、インターネットを通じて誰でも無料で利用することのできる特許庁の特許や商標等の知的財産に関するデータベースです。検索対象を「商標」に選択し、キーワードを入力して簡易検索ができます。商標権を侵害しないよう、使用したい商号が商標登録されていないか確認しておきましょう。
特許情報プラットフォームのホームページ
特許・実用新案、意匠、商標の簡易検索
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