法定遺言事項とは
遺言として法的効力のある事項は法律で定められています。これを法定遺言事項といいます。
法定遺言事項は大きく分けると3つあります。@身分に関すること、A財産の処分に関すること、B相続に関することです。
身分に関する遺言事項
1 認知 (民法781条2項)
認知とは男女の間に生まれた子供について父親が自分の子であることを認めることをいいます。
遺言によって婚外子(非嫡出子)の認知を行なうことが出来ます。(まだ生まれていない胎児に対しても行えます)。
2 未成年者の後見人、後見監督人の指定 (民法839条1項、民法848条)
未成年者に対して最後に親権を行う者で、かつ管理権を有する者は、後見人の指定と後見監督人の指定ができます。
(両親の親権に服している未成年の子について指定することはできません)。
財産の処分に関する遺言事項
3 信託の設定 (信託法2条)
相続人が幼児や高齢者など、財産を管理する能力が十分でない場合、信託銀行等に預けて財産を管理・運用してもらうことができます。
4 遺贈 (民法964条)
特別に貢献してくれた人など、財産を相続人以外の人に無償で贈与することができます。
遺贈には包括遺贈と特定遺贈があります。
5 寄付行為 (民法41条2項)
財団法人の設立のための寄付行為を行なうことができます。
また公益団体や学校法人などに寄付をすることもできます。
相続に関する遺言事項
6 相続人の廃除や廃除の取り消し (民法893条、民法894条2項)
廃除とは、遺留分を有する法定相続人が被相続人に対して虐待や侮辱等を行ったため、被相続人がその者の相続権を失わせる制度です。
遺言によって、相続人の廃除をしたり、廃除を取り消したりできます。
7 相続分の指定とその委託 (民法902条1項)
「長男には3分の2、次男には3分の1を相続させる」といったように、法定相続分とは異なる各相続人の相続分を指定できます。
また自分で相続分を指定せず、第三者に指定させることもできます。
8 遺産分割方法の指定とその委託 (民法908条)
「甲には不動産、乙には預貯金を相続させる」といったように、遺産分割の具体的な方法を指定できます。
第三者に分割方法の指定を委託できます。
9 遺産分割の禁止 (民法908条)
「相続人が未成年者であるため、成人するまで遺産分けを待ってほしい」等の事情がある場合、相続開始から5年以内の期間を定めて財産の分割を禁止することができます。
10 特別受益の持ち戻しの免除 (民法903条3項)
生前贈与等は財産の前渡しとみなし、遺産分割の際に遺産に含めることを特別受益の持ち戻しといいます。
一部の相続人に特別な利益を与えることが被相続人の意思であれば、特別受益の持ち戻しの免除をすることができます。
11 相続人の担保責任の指定 (民法914条)
相続人の一部が相続した財産に欠陥があった場合、民法では他の相続人に対して、損害賠償請求や解除を求めることができるとしていますが、遺言によってその責任の負担方法を変更できます。
12 遺贈の減殺方法の指定 (民法1034条)
遺贈された財産が複数ある場合、民法では遺贈の目的物の価額の割合に応じて減殺するという規定がありますが、遺言によってこれと異なる内容を指定することができます。
13 祭祀主宰者の指定 (民法897条)
祭祀財産(系譜、祭具、墳墓)はその性質上、祖先の祭祀を主宰すべき者が単独承継することとされています。
遺言によって祭祀主宰者の指定をすることができます。
14 遺言執行者の指定とその委託 (民法1006条)
遺言執行者というのは遺言内容を実行させるための役割を担う人のことで、不動産の所有権移転登記、預貯金や株式の名義変更などの手続きを行います。
一人または数人の遺言執行者を指定でき、また指定を第三者に委託することができます。
付言事項(遺言事項には当たらない事項)について
上述のような法定遺言事項に当てはまらない事柄を遺言書に記載しても法的効力は生じません。
しかし法的に効力がないからと言って、書いても無駄というわけでもありません。
いわゆる付言事項として、ご自身の心境や、相続分を指定する理由、家族への感謝の言葉などを記すことができます。
法定遺言事項だけよりも、家族への最後のメッセージを遺した方が、ご自身の気持ちや想いを相続人により理解してもらえるのではないでしょうか。
遺言書に付言事項を記して残された家族への想いを伝えることは、相続トラブルを防ぐ上でも確かに意味のあることであり、大切なことと言えます。
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