遺言書の調査
相続手続きをするにあたって、まず遺言書があるかどうかを調べることは重要です。
被相続人が遺言書を残していれば、遺言書の内容に従った相続をすることになります。一方、遺言書が残されていなければ、相続人の間で遺産分割協議を行い、遺産を配分していくことになります。
ただし、相続人全員の同意があれば、遺言書がある場合でも、遺言書とは異なる内容の遺産分割協議を行っても問題ありません。
しかし、遺言書の存在を知らずに遺産分割が行われ、後に遺言書が見つかった場合は、遺産分割協議は無効となるおそれがあります。「遺言書があると分かっていれば、このような遺産分割はしなかった」と言い出す相続人が出てきて、大変なトラブルに発展する可能性があります。
ですから、相続開始後のなるべく早いうちに、亡くなった方が遺言書を残していないか調査することが大切なのです。
自筆証書遺言の探し方
遺言書の有無はどのように確認できるでしょうか。
被相続人が遺言書を作成していた場合でも、身内には遺言書の存在を知らせないケースがよく見られます。
まずは、被相続人が自宅内で、大事なものを保管していたと考えられるところを探すことからはじめてみましょう。タンス・仏壇・書斎・金庫等から遺言書が見つかることがあります。自宅以外にも病院や老人ホームで作成してその場所に残されている可能性もあります。
また、誰かに見られることを心配して、貸金庫にいれていることもあります。その場合、貸金庫は銀行口座と同じく、死亡と同時に凍結されてしまいますので、貸金庫を開けるためには、相続人全員の戸籍謄本等の必要書類を揃えて手続きすることが必要になります。
さらに、被相続人が付き合いのあった友人や知人、専門家(行政書士・司法書士・税理士・弁護士)等に預けていることもあります。その場合、死亡のご挨拶とともに、遺言書の存在について何かご存じでないか、尋ねることができるかもしれません。
遺言書が見つかったら、検認手続きが必要
自筆証書遺言が見つかった場合、勝手に開封してはいけません。
すみやかに家庭裁判所に提出して「検認」の手続きを請求しなければなりません。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上で開封しなければならないことになっています。
検認とは、遺言書の内容を明確にする手続きのことで、遺言書の偽造や変造を防止することや、遺言書の存在を相続人等に知らせることを目的としています。もし、検認手続きを経ないで、勝手に封印のある遺言書を開封した場合には、5万円以下の過料が課される場合がありますので注意が必要です。
なお、検認は遺言書の有効・無効を判断するものではありませんから、検認手続きを経ずに遺言を開封したとしても、遺言の有効性が否定されるわけではありません。
家庭裁判所での検認手続きの流れ
検認手続きは、遺言者の最後の住所地を管轄する裁判所へ申立てすることになります。その際、遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本を申立書に添付することが必要です。
検認の申立て後、相続人全員に対して「検認期日通知書」が送付されます。遺言書を開封するには相続人等の立会いを要するとされていますが、都合が悪い場合は出頭しなくても問題ありません。検認当日に立ち会わなかった相続人等に対しては、検認が終了した旨の通知書が送付されます。
申立てから約1か月後、家庭裁判所において検認が実施され、遺言書の開封と確認作業が行われます。(10分ほどで終了します。)検認が終わった後、遺言書に「検認済み」の表示がされ、原本が申立人に還付されます。
相続登記や預貯金の名義変更など、遺言どおりに相続手続きを進めるには、遺言書に「検認済証明書」が添付されていることが求められますので、検認後、検認済証明書の申請をすることが必要です。
公正証書遺言検索システムを利用する
自筆証書遺言がみつからなかった場合、公正証書で遺言を残している可能性があります。
公正証書遺言の場合、遺言書の原本は公証役場で厳重に保管されており、「遺言検索システム」を利用すれば、公正証書遺言の有無を確認できます。
遺言検索システムとは、全国の公証役場で、平成元年(昭和64年1月1日)以降に作成された公正証書遺言の情報を、日本公証人連合会がデータベース化して、検索できるようにしたものです。
遺言検索システムは、全国どの公証役場でも利用することができ、公正証書遺言の有無を確認できます。遺言検索システムを利用する際には、遺言者の死亡が記載された除籍謄本、遺言者との相続関係を証しする戸籍謄本等の書類が必要です。
公正証書遺言が登録されている場合、「遺言検索システム照会結果通知書」が交付され、遺言書の原本が保管されている公証役場を確認することができますから、その公証役場へ出向き、公正証書謄本の交付請求をすれば、遺言の内容を確認できます。