会社設立の事前準備 8 株式譲渡制限にする
会社の株式は、原則として自由に譲渡することができます。
しかし、家族経営など少人数で経営している会社にとって、知らないうちに株式が譲渡され、好ましくない者が会社経営に関与するということは望ましくありません。
最悪の場合、会社が見ず知らずの他人に乗っ取られるおそれもあります。
そうした事態を防ぐため、会社を設立する際、「株式の譲渡制限」と呼ばれる規定を設けることができます。
株式の譲渡制限とは、株式を譲渡するためには会社の承認を要するという制限を加えることで、これにより株主が自由に株式を売り渡すことを防ぐことができます。
すべての株式が譲渡制限株式である会社を「譲渡制限会社」(非公開会社)といい、株式の譲渡を自由に認める会社を公開会社といいます。
実のところ、上場している会社(公開会社)は少数であり、圧倒的大多数の中小企業は株式譲渡制限の規定を設けています。
株式譲渡制限に関する手続き
株式の譲渡制限を加えるためには、定款で、株式の譲渡に会社の承認が必要である旨を定めなければなりません。
具体的には、定款に「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会(株主総会)の承認を受けなければならない」との文言を置きます。
この承認を与える機関は、取締役会を設置していれば取締役会、取締役会を置いていない場合は株主総会となります。
株式譲渡制限にするメリット
上述のとおり、株式譲渡制限を加えると、株主が自由に株式を売り渡すことを防ぐことができ、好ましくない者が会社経営に関与するという事態を回避することができます。
でもそれだけではありません。以下、株式譲渡制限にする4つのメリットについてお伝えします。
1.取締役会の設置義務がない
公開会社の場合、取締役会を設置しなければなりません。
また取締役会を設置するためには、最低でも取締役3名、監査役1名が必要です。
これに対し、株式譲渡制限会社では、取締役は一人でもよく、取締役会も置く必要はありません。
このため、会社の運営コストを節約することができ、スムーズな意思決定をすることができます。
2.取締役の任期を最長10年に延長できる
通常、取締役の任期は最長2年で、任期満了の度に株主総会の開催や、登記の変更等の手続きを行う必要があります。
これに対し、株式譲渡制限会社では、定款で定めることにより、取締役の任期を最長10年まで延長することが可能です。
これにより、安定した経営をすることができ、取締役の任期満了ごとに発生する、登記の費用や手間を省くことができます。
3.株主総会の招集手続きを簡略できる
会社の重要事項を決定するには、株主総会または取締役会での決議が必要です。
そして、株主総会の招集は、総会期日の2週間前までに行うことが原則です。
しかし株式譲渡制限会社であれば、取締役会設置会社では、総会の1週間前、取締役会を置いていない会社では、定款でさらに短縮することができます。
4.相続による株式の分散を防止できる
株主が亡くなり、相続が発生した場合は、株式譲渡制限を規定していても、株主は移転し、好ましくない人物が株主となる可能性があります。
こうした事態を避けるため、株式譲渡制限会社では、株式が相続された場合、定款の定めがあれば、その相続人に対して株式の売り渡しを請求できます。
(この手続きは株主総会特別決議によって行います)
これにより、相続による株式の分散を阻止することができ、好ましくない者が会社経営に関与することを防ぐことができます。