会社設立の事前準備 2 事業目的を決める
会社の商号を決めたなら、次に検討すべきことは会社の事業目的です。「何をする会社なのか」外部に分かるように記載したものを事業目的といいます。
事業目的は定款に必ず記載しなければならない絶対的記載事項で、会社は定款で定められた目的の範囲内で事業を行なうことができます。すでに個人で事業を営んでおられた方は、今行なっておられる事業内容を記載することができるでしょう。また次にあるように、まだ行なっていない事業も記載することも可能です。
会社設立後の事業展開を予想する
原則として、定款に目的として記載されていない事業は行なうことができません。もちろん、事業拡大に伴って事業目的の変更や追加が必要となることもあるでしょう。その場合、定款の変更手続きや目的変更登記を申請しなければなりません。株主総会を開催し、定款変更の決議を行い、臨時株主総会議事録を作成し、本店所在地の法務局に変更登記申請書を提出しなければならず、相当な手間や費用がかかります。
ですから会社設立の段階で、事業の成り行きをあらかじめ予想することも大切です。今後の事業展開をある程度イメージできたなら、将来行なう可能性のある事業も含めて定款に記載しておきましょう。
会社設立時の事業目的の適正な数とは
定款に記載する事業目的には数の制限がありません。ですから将来的に展開していきたい事業をすべて羅列したとしても登記上は問題ありません。また記載したならば、いつか必ずその事業を行なわなければいけない、というわけでもありません。実際、大企業の事業目的をみると、数十個の目的が記載されていることが多くあります。
ただし、立ち上げたばかりの会社が大企業と同じように、たくさんの事業目的を羅列することには注意が必要です。たくさん書きすぎてしまうと、「結局のところ何をしたい会社なのか」、取引先に明確なものが伝わりにくくなり、会社の信用性に疑いをもたれる可能性があります。
会社の事業目的は銀行が融資を行なう際の判断材料ともなりますから、実態のつかみにくい会社という印象を与えると、銀行の融資を受ける際にも不利に働くかもしれません。そうしたことを考えると、設立当初に定款に記載する事業目的の数は、5〜10個程度にしておくのが無難といえるでしょう。
許認可の要件に適合した事業目的にする
事業目的を決めるに当たって、最も注意を要するのは許認可が必要な事業の場合です。許認可が関係する場合、管轄の行政庁は定款の事業目的の項目をチェックします。もし許認可の要件に適合した目的が記載されていないなら、許認可が下りない可能性があります。
たとえば、旅行業なら「旅行業または旅行業法に基づく旅行業」、古物商なら「古物営業法に基づく古物の売買」、派遣事業なら「労働者派遣事業及び有料職業紹介事業」などの文言を目的として記載しなければなりません。
許認可に適合しない目的となっている場合、定款の変更手続きや変更登記申請など余計な手間や費用が必要となり、事業をスタートすることすらできず時間のロスが生じてしまいます。ですから始めたい事業には許認可が必要なのか、許認可が必要な場合に事業目的に記載すべき文言は何かについて事前に確認しておくことが大切です。