遺贈とは
遺言によって財産を無償で贈与することを「遺贈」といいます。遺贈には@包括遺贈とA特定遺贈があります。
「相続」は法定相続人に対してだけ財産を譲渡するのに対して、「遺贈」は法定相続人以外の人にも財産を譲渡することができます。この遺贈により財産を受け取る人を「受遺者」といいます。
受遺者は個人・法人を問いません。ですから相続財産を学校や財団法人へ寄付することも可能です。
とはいえ、遺贈する場合には他の相続人の遺留分への配慮が必要です。遺留分権利者から減殺請求を受けると、侵害している部分については財産を返還しなければなりません。
受遺者は被相続人の相続開始時に生存している者に限られます。もし遺言者が死亡する以前に受遺者が死亡してしまった場合、受け取る権利は消滅します。受遺者の子などがその権利を承継することはありません。尚、胎児はすでに生まれたものとみなされるため、受遺者の権利があるとされています。
包括遺贈と特定遺贈
包括遺贈
包括遺贈とは「全財産を贈与する」とか「財産の3分の1を譲渡する」といったように、遺産に対する一定の割合を指定して行なう遺贈のことです。
ただし、包括受遺者は相続人と同様の権利義務を持つことになりますので、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(債務)も指定された割合で受け継ぐことになります。
また包括受遺者は、相続人全員の遺産分割協議に参加することができます。
特定遺贈
特定遺贈とは「○○町○丁○番地の建物」とか「○○銀行○○支店の定期預金」といったように、特定の財産を指定して行なう遺贈をいいます。
包括遺贈とは異なり、受遺者は遺贈を受けた財産以外の権利義務を持つことはありませんので、マイナスの財産(債務)を承継することはありません。
遺言者の死後、遺贈を放棄することも自由
包括遺贈の場合
包括遺贈の場合、例えば遺産が借金のほうが多いときなどに、遺贈を放棄したいと思うかもしれません。
包括受遺者は相続人と同じ権利義務を持ちますから、遺贈を放棄するには相続放棄と同様の手続きが必要です。
相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に、家庭裁判所に申述をしなければなりません。
特定遺贈の場合
特定遺贈の場合は、遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄できます。また家庭裁判所に申し立てをする必要もありません。
遺贈を放棄したいときは、相続人や遺言執行者などの遺贈義務者に対する意思表示を行なうだけで済みますが、できれば内容証明郵便による通知を行なうことが望ましいでしょう。
条件付きの遺贈も可能
受遺者に対して財産を与える代わりに、一定の義務を負担させることもできます。
たとえば、「妻の面倒を見ること(生活費を毎月○○万円支払うなど)を条件に土地や建物を遺贈する」という内容の遺言も可能です。
これを「負担付遺贈」といいます。
なお受遺者は遺贈された財産の価値を超えない範囲で、その負担を履行する義務を負うことになります。つまり、貰う財産の価値以上に負担する義務はありません。
もし受遺者が義務を負いたくないと思うのであれば、遺贈を放棄することができます。その場合は、財産は負担を受けるはずだった受益者(上記の例で言うと妻に相当)が相続します。
ただ負担付き遺贈をする場合は、相手が受ける意思があるかどうか十分話し合うことが必要でしょう。また約束通り負担が履行されるか見届けるため、遺言執行者を指定するのが望ましいと思われます。
受遺者が遺産を受け取ったにもかかわらず負担の義務を果たさない場合、他の相続人は相当の期間を定めて履行を催告し、それでも履行がなければ家庭裁判所に遺言の取り消しを請求することになります。