会社設立の事前準備 6 発行可能株式総数を決める
発行可能株式総数とは、会社が発行可能な株式の上限のことで、会社の設立登記のときまでに、定款に記載しなければならない事項の一つです。
では、なぜ発行可能株式総数を定款に記載しなければならないのでしょうか。理由は2つあります。
1.機動的な資金調達を行なう
資金調達が必要になった場合、「増資」つまり、株式を発行し出資を募ることによって資金を集めるという手段があります。
その場合会社は、通常株主総会の決議が必要ですが、定款で発行可能な株式の上限を定めておけば、株主総会の決議を経ずに、取締役会等で自由に株式を発行することができます。
機動的な会社運営を図ることを目的とした制度と言えます。(授権資本制度)
2.取締役会の権限乱用を防ぐ
とはいえ、無制限に株式を発行できるとすれば、取締役会等が大量の株式を発行するおそれがあります。
そうなると、株主が保有している株式の持ち分比率が下がる等の問題が生じることになります。
取締役会が権限を乱用して、株主が不利益を被らないよう、発行可能な株式の上限を超えて株式を発行できないことを定めているのです。
発行可能株式総数を設定する3つのステップ
step1 1株あたりの金額を設定する
まず、決めなければならないことは、1株あたりいくらの金額にするかということです。
資本金の範囲であれば、1円でも100万円でも自由に設定することができます。
ただし、将来増資をする場合、1株の金額が大きすぎると、少額の出資を受け入れることが難しくなりますし、逆に、1株の金額が小さすぎると設立時より安く発行することが不可能になりますので、今後の増資をする可能性も踏まえて考慮することが必要です。
一般的には、1株あたり5万円くらいに設定する会社が多いようです。
step2 設立時発行株式数を設定する
1株あたりの金額を設定すれば、発行する株式の数も決まります。
例えば、資本金1000万円で1株の金額が5万円なら、発行する株式数は200株となります。
(1000万円÷5万円=200株)
step3 発行可能株式総数を設定する
次に発行できる株式の上限を設定しますが、設立時発行株式数をそのまま発行可能株式総数とすることもできます。
ただしその場合、将来増資をするためには、株式総会での決議や変更登記といった面倒な手間がかかってしまいます。
ですから今後の事業拡大や増資の可能性をあらかじめ想定し、例えば、発行株式数の10倍にするなど、できれば定款の変更の生じない設定にするのがよいでしょう。
公開会社(譲渡制限のない会社)の場合、発行可能株式総数は設立時発行株式の4倍以下にする必要がありますので、注意が必要です。