会社設立の事前準備 4 資本金を決める
資本金とは、会社設立時に用意しておく当面の運転資金、いわゆる元手です。
かつて株式会社の設立には、1,000万円以上が必要でした。
しかし、平成18年の会社法の施行により、この最低資本金制度が撤廃され、会社を設立するためのハードルはかなり低くなりました。
現在は資本金1円でも会社を作ることができます。
といっても会社設立には、登録免許税や定款認証手数料など、最低でも20万円以上は必要ですし、他にも初期費用がかかります。
長期に安定した経営をするためには、資本金をいくら用意すればいいのでしょうか。
資本金を妥当な額に設定するために考慮すべき4つのポイントを解説します。
利益が出るまでの運転資金を用意する
資本金とは会社の運転資金です。
ご自身が始めようとしている事業には元手がどれくらい必要かを考えてください。
賃貸オフィスの保証金や家賃、備品の購入、商品の仕入代金、光熱費や人件費などの経費等、開業してから利益が出るまでの事業資金はすべて手元のお金で賄わなければなりません。
極端に少ない資本金で会社を始めると、すぐに債務超過に陥り、事業が立ち行かなくなることは容易に想像できるでしょう。
一般的に、最低でも3カ月間は利益なしでも事業を続けられる額の資金を目安にして起業することが多いのではないでしょうか。
したがって、「初期費用+最低3カ月間の運転資金」程度を資本金として用意するのが理想的です。
対外的な評価を考慮する
資本金は信用のバロメーターです。
多くの企業は新規取引を始める際に、相手がどんな会社なのか、資本金の額を調べることも少なくありません。
資本金の額が極端に少なければ、財政的に不安定な会社と判断される可能性がありますし、逆に資本金が多ければ、財政的に体力のある会社とみなされ、営業先との取引で有利になることも考えられます。
そのように対外的な評価の目安となり得るという観点で、資本金の額を決めることもできるでしょう。
融資を受ける場合の基準になる
創業時の効果的な資金調達方法として、創業融資の制度があります。
創業融資とは、自治体が行っている中小企業支援のための制度で、一般の金融機関よりもかなり好条件の融資内容となっています。
ただし資本金が極端に少なすぎるなら、融資の審査はほぼ通らないでしょう。
自己資金つまり資本金をいくら用意しているかということが重要な審査要素となっているからです。
まとまった額の資本金を用意し、融資の審査を通過すれば、自己資金の10倍の融資を受けることも可能です。
つまり、用意できる資本金の額によって受けられる融資の額も大きく変わってくることになります。
積極的に融資を検討しているなら、その点も考えて資本金額を決めるようにしてください。
税金特例のメリットを考慮する
ここまでのところでは、設立時の資本金は多い方が有利という話しでしたが、税金面の観点からすると、資本金が多すぎるのもよくありません。
資本金の額が1,000万円未満の場合、会社設立時より2年間は、消費税の納付の免除を受けることができます。
これを知らずに資本金を1,000万円で設定すると、初年度から消費税を納めなければなりません。
また、資本金が1,000万円超えになると、毎年決算時に支払う法人住民税の均等割の額も割高になります。
創業時は特に資金繰りの厳しい時期ですし、消費税や法人住民税の均等割は赤字でも納める義務があります。
ですから特段の事情がなければ、資本金の額は1,000万円未満に抑えることによって節税メリットを享受できるでしょう。
まとめ
以上のポイントを踏まえて資本金額を考えるなら、妥当な額がいくらなのか見極めることができると思います。
統計によると、創業時の資本金は200万円〜500万円に設定するケースが最も多いようです。
長期に安定した経営ができるよう、起業後の財務状況をよく見据えた上で資本金の額を決めるようにしてください。