会社設立の事前準備 3 本店所在地を決める
本店所在地とは会社の本拠地のことで、会社の事業目的と同じく絶対的記載事項の一つですから、定款に必ず記載しなければなりません。本店所在地をどこにするかは原則として自由に選択できますので、会社の活動拠点にすることも自宅の住所にすることも可能です。ただし許認可事業の場合は、事業の本拠地を本店所在地とすることが要件になっていることがありますので注意が必要です。
取引先と面談する際、まずは会社の所在地を告げることが多いのではないでしょうか。本店所在地をどこにするかは、会社の信用に関わる重要な要素ですから慎重に決定する必要があります。では会社設立時の本店所在地をどのように決定したらよいでしょうか。
メリットとデメリットを考慮する
自宅
一般的に会社設立時には軌道に乗るまでできるだけ経費を抑えたいものです。多くの場合、自宅を本店所在地として選ぶかもしれません。ただし自宅を本店所在地にすると、個人の住所が外部に知られること、仕事の打ち合わせがやりにくい等の問題があります。
賃貸オフィス
今後の事業の拡大を見据えて考えるなら、やはり賃貸オフィスを本店所在地として選ぶ人は少なくありません。当然ながら仲介手数料、保証金、毎月の賃料などの経費はかかります。とはいえ、賃貸オフィスであれば接客スペースも十分確保できますし、取引先等外部からの信用を得やすいというメリットがあります。
レンタルオフィス・バーチャルオフィス
経費を抑えつつ、かつ立地条件のよい場所を選びたいなら、最近はレンタルオフィスやバーチャルオフィスなどもあります。事業に必要な設備が最低限整っていますから、創業して間もないまだ規模の小さな会社であれば適しているかもしれません。他方、会社としての実態がつかみにくい等の理由から、銀行の法人口座開設ができないこともあるようですから注意が必要です。
マンションの一室
マンションの一室を本店所在地にすることも可能です。ただし賃貸物件の場合、居住用以外の事業目的での使用が不可となっていることもありますから、事前に賃貸借契約書の内容を確認することや、不動産管理会社・オーナーの承諾を得ておくことが必要です。
地方公共団体が融資や助成金の制度を設けていることがありますが、それを利用するにはその地域に本店所在地がある会社を対象にしていますので、各種助成金に関する情報も参考になさってください。
本店所在地 2つの記載方法
本店所在地をどこにするかが決まったなら、次に定款上及び登記申請上の本店の住所の記載方法を決めなければなりません。定款上の本店所在地の記載方法には次の二つがあります。
最小行政区画までの記載
例) 大阪府 堺市
東京都以外の政令指定都市の区については表記不要です。
番地まで住所全ての記載
例) 大阪府 堺市 〇区 〇〇町 〇丁〇番〇号
最小行政区画までの記載に留めておけば、将来本店が移転することになっても同じ行政区画内であれば、定款変更の手続きは必要ありません。また、登記申請上の本店の記載については、番地までの住所の記載が必要ですが、ビル名、ビルの階数、部屋番号まで記載するかは自由となっています。同じビル内で移動が生じる可能性もあり得ますから、記載しないほうが良いかもしれません。
本店所在地を変更した場合、定款変更の必要がある場合には、臨時株主総会を開催し、株主総会議事録を作成し、変更の日から2週間以内に法務局に本店移転の登記申請を行なう必要があります。相当な費用や手間がかかりますから、会社設立時から将来本店を移転する可能性も考慮して本店所在地の記載方法を決定しましょう。